・白い雲眠たくなるよな秋の昼  (中学時代)

・遠山に雲一筋の秋の昼  (中学時代)

・絶望と言ったラジオの軽々さその人思えば涙流れる  (高校時代)

2003年

・結局は何もなさずにこのままで終わっていくのか秋の日の予感

・大学の友とすれちがい顔を見て無言で立ち去る二十年後の今日

・昔の友あの人知らぬと言い放つ聖書の中のペトロのように

・疲れたと言いし君は嗚咽して泣き伏すなりどうしょうもなし

・君のことはすべて知っていると言い放つ校長の言に我言葉失う

・教員の今は奴隷となりさがり上に向かって意見言う人なし

・職場にて話す相手いない教師授業中ともだちの詩読み教える

・一週間の疲れたまる金曜の夜仕事やめ妻とともに発泡酒飲む

・放課後に一人ピアノ弾き西日さす音楽室にて自分の影見る

2004年
・ベランダで娘と二人夕食をとる物言うは七輪のはぜる音のみ

・はるか昔恋人と来た海よ今は一人海を見ている

・訪ね行く私の小学校今はなくただ広がる草原木々の群れのみ

・訪ね行く昔の我が家今はなくテニスコートと切り株だけに

・あの道もこの道もある小学生の時父と一緒に通った思い出

・私の小学校今教師となりて訪ね行くあの子らの中に私がいる

・勤務した2校目の小学校訪ね歩くポプラ並木の下夢のよう

・新婚のアパートまだある錆び付いた曲がった階段出会った頃のまま

・山を見て思いとどまり八月の空は青くのびていく

・暑さすぎものみな我を一人にす今日一日をいかに過ごさん

・暑さすぎ残暑ない野分かな風わたる夏の終わりに

・誉れある明日は来るのか欲のない日々の営み麗しきかな

2005年

・きたるべき決意表明の日がせまるどこに行く私の乗る銀河鉄道

遠近の眼鏡をかけしこのごろよ下を向く癖我は得るなり

昔なつかし断乳の記事を読み思い出す我が息子のその頃のことなど

断乳の記事を読みながら思い出す過ぎさりしそのころの想い出

断乳の息子のことを思い出すあのころの幸せ二度となく



2006年

・何故にこうなったのか後もどりできぬ個性のかたまり

・怒りを楽器と声に乗せ平和な日をいつか望む

・青春の片思いの淡き夢いまだそこに我はいるなり

・くらべると思いうかばぬ長所なりくらべることをやめる他なし

・まな板の快きリズムあり新婚の時のように妻を見る

・意志強く持て何事かなさざる時この世に足跡残すのなら

・いくつものドラマを束にしてしばる明日は新聞回収の日

・定年まで後何年と指をおり数えることが習いとなりぬ

2006年12月

・休日前家に運ぶかばん二つ恐ろしいほど仕事の多さよ

・家に帰り仕事できぬほど疲れた日酒も飲めない体となりぬ

・休日の気の遠くなる仕事ありいつ倒れてもおかしくない

・朝やっと起き足取り重く学校への道ただただつらい情けない日々

・「先生」と親のいぬ子まとわりておんぶしたれば泣きやむなり

・子らのためよかれと思いは教師の弁罪つくりな自己弁護かな

・職員室に居ても一人職員会議でも一人

・ゴミぶくろ三つ棄て年末の一日はじまろうとしている

・子どもらのプレゼントもなしさびしきや今日は父の誕生日のはず

・窓の外雪は横向きに吹いている大晦日の朝一年の終わり

・すべてに遅れて気づく私の人生もはや後もどりはできぬけれど

・父親とは何か一人問う私の子らを見つめながら

・教師とは何者か喧噪の中問い直すクラスの現実を前にして

・いつの間にこうなってしまったのか私の子らよ父親の願いとは別に

・喧噪の教室の中我が子と思え反抗する子も憎しみが消え

・テストつけあまりの悪さに教え方を問う吾もまた点数を気にするとは

2007

帰りこむ息子待ちつつ母親の62年の歳月過ぎたればこそ

・お盆すぎ涼しさもどり行く夏の2007年の今過ぎゆくなり

008年

・忘れてはならぬと刻め昨年の続きはありと今年も緻密に

・憎しみを抱えて生きるここ数年私に対しての政略に抗して

・風薫る新6月の心地よさ今年も生きてるさわやかさの中

・負けて泣き勝って笑うは運動会子どもの海子どもの波

・自分に言い聞かせ納得させ職場に出る日々の暮らしよ

・最期より今を見るこの視点獲得せば小さきこと忘るる術なり

・大空にバカと描いて忘れたい日々の職場の嫌なことなど

・子どもらと空を眺めて忘れたい日々の職場の嫌なことなど



2009年

・春間近か雨降る土曜一人起き久しぶりに歌つくりぬ気持ちも新たに

・人生の終盤に入りつつ何をする今の苦難を如何に打破する

・金曜の酒控え迎えたい貴重な土日生き返る時間

・改めて我の仕事見直して残りの日々を如何に使わん

・私の思考をまとめる三畳の仕事場1台のパソコンこよなく愛して

・長髪にジーパンはきたる若者はあれは自分か二十歳の頃よ

・長髪を風になびかせ歩きたる街は自分と思わざりしを

・長髪のあの時代のジーパンよもう一度帰れるならば

・亡くなりし父の病院前にいて子ども時分を思い出す今

・教室の黒板にある子どもの字最後に書いた学年末

・失われた10年を肩に背負い一人走る夕焼けの中

・川沿いのマラソンコースひた走る失われた10年悔やみながら

・あなたにとって得た10年私にとって失った10年なんとバランスのよい

・一人走る川沿いのコース10年の失われたものを数えながら

・わなだわなこれはわなだとあまいはなしこつこつはたらくのがいちばんいいってこと

・おっとととあぶないあぶないうまいはなしそんなものはありゃせんこつこつはたらくのがいちばん

・手をあらうインフルのなかわれはこんなに神経質でないはず

・窓だなにたまる1mの紙そのままに君は病気かと問いてみたくなる

・我が父の夢に見ていた交代劇50年後に実現す

・いたずらに過ぎ去りし日々の薄さかなただ時間だけが積み重ね


2010年


・いたずらに年重ね織り後三年教師としての生きる道ありや

・いちどみたじごくのけしきもうにどとあじわうことはしまいとちかう

・病治り喜び勇み「おとうさん」と呼ぶ今朝の私夢の中でもうれし

・「消えろ」と言う子どもの前で立ちつくす私がいた学級崩壊前夜

・20年ぶりに会ったのに挨拶もなく素通りで帰るのかい教頭さん

・大学の友が今度来る校長とはこの人で私は退職する

・別れをもこのような形で祝うのか3月の春の大風

・新聞に見つけた友の名二人新しい人生を生きていくのか